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上越開業記念。

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東北と上越と高崎と。
続きに小説~


1982年11月15日

「開業、おめでとう」

「…なにそれ、皮肉?」

全国新幹線鉄道整備法によって計画された僕と東北は、肩を並べて同時開業の予定だった。僕たち2人は同等に、同じスタートラインに立つ筈だったのに。

祝辞を述べてから黙ったままこちらを見つめる東北を一瞥して、僕はすぐに踵を返した。

周囲の反対やトラブルや諸々の事情、どろどろと渦巻く権力者のカードのひとつ。
上越新幹線に限らず、これは先の東海道・山陽新幹線も通ってきた道で、計画段階からある程度わかってはいた。莫大な資金が動くのだ、そこにそれぞれの人間の純粋とはいえない思惑が絡むのは、どうしようもないことだった。

…それに加えて、トンネル工事の異常出水事故。
ああ、これはダメかもしれないと心のどこかで思ってはいたけれど。

それを、これからのライバルで、同僚で、…もしかしたら唯一無二の相棒になるはずの、東北のその言葉。5ヶ月前に僕を置き去りにして、さっさと走り出してしまったその口で祝われても皮肉としか受け止められなかった。
苦楽を良くも悪くも共にしてきた東北は、僕よりも先に開業してしまった。

「…上越」
「聞こえない」
「上越!」

すたすたと追いすがってきた東北は僕の肩を掴み、無理矢理に振り向かせる。今更隠す気もせず不機嫌なままにらみ返すと、東北はため息をひとつもらした。
とりあえず僕が立ち止まったままでいると、東北はさっき言葉と一緒に贈るつもりだったのだろう花束から花を一枝取り出した。胡蝶蘭によく似た、赤紫色の花。
そのままおもむろにひとつ花だけ取って、僕の胸に飾った。

「…だから、君からのお祝いは受け取りたくないんだけど」

飾られた花を取り払ってやろうと手を伸ばせば、東北に制される。
その手で再び東北は同じ枝の花をつまむと、今度は自分の胸に飾った。

「…何のつもり?」
「お前の開業は今日だ。俺の開業祝いも今日だ。2人で、揃って。」
「…」
「今までのは暫定、本開業は今日。」
それから、とつぶやいて3つ目の花を手折ると、東北は手に乗せたままふわりとかかげた。
ほぼ幻となった、3人目の彼のために。

お前は祝ってくれるだろう?と視線で問われて、少しだけ微笑んだから。
あーもうやだなあこいつ、とため息をつきながら、僕も小さく微笑みを返した。

「…開業おめでとう、東北。」


* * *

200X年11月15日

「上越上官!あの…開業日おめでとうございます!」

デカい図体に眩しいオレンジの制服。妙に緊張しながら引きつって言う高崎の表情。あんまりにもひどい顔をしているものだから、僕は思わず小さく吹き出した。何故笑われたのか自覚のない高崎は、一体自分は何をしでかしたのだろうと更に青くなったり白くなったりしている。
もう少しその様子を観察していてもいいなあ、と考えながらも、差し出してきたプレゼントを落とされても嫌だな、と思いとどまった。

「どうもありがとう。高崎は優しいね。」

ことさらにっこりと微笑んでやれば、今度は赤くなったりやっぱり青くなったりと忙しい。いつのころからか恒例行事となったこのお祝いに、毎年高崎が頭を悩ませていることも実は良く知っていた。何年前だったか正確には覚えていないけど、確か僕が何げなく高崎に開業祝いあげたのが先。そのお菓子は貰い物だったし、ちょっと量が多くて重かった。だから、近くをフラフラしてた高崎に押し付けただけの代物だ。ちょうどその日がたまたま高崎線の開業日で、ついでだからお祝い、と本当になにげなく言っただけだったんだけど。

直属の上司からお祝いをされたっていうので、実直な性格の高崎は僕に御礼返しを…と繰り返していつのまにやら習慣化。まあ、給料的にも色々厳しいだろうから、大げさなものはいらないと言ってある。大枚をはたかないで済んだ高崎はほっとしただろうが、高価でないながらも失礼に当たらないものを探すのはかえって困難なようだった。僕の開業日が近づくにつれてぐるぐると思い悩む高崎を見てるのも楽しみだから、いいんだけどね。

高崎にもらった箱を、開けていい?と問えばこくこくと盛大なうなずきが返ってくる。もうそれだけで十分なんだけどなあ、なんて思いながら箱を開けると、その中身はシンプルなデザインながらセンスのいい小さな花瓶だった。

「あの!これも…!」

そういって差し出したのはデンファレの花。胡蝶蘭に似た、赤紫色の花。

「…上越上官?」

花を見た瞬間、懐かしさと少しの苦みを思い出して、おもわず受け取らずにじっと見返す。その間が不穏なものだと思ったのか、高崎がおろおろと動揺し始めた。

「…あれ…いや、これ、すごく上官に似合うと思って…花言葉も「有能」だから、きっと喜ばれるって宇都宮が…!」
「へえ、宇都宮がねえ。」

うっかり嫌な名前を口走った高崎が、微妙に変わった僕の声のトーンに頬を引きつらせた。
まあ、毎年毎年安くてセンスのいいものを高崎が1人で選んでいないことは承知の上だ。相談する相手が"誰"になるのかも、大体わかっていたけれど。

「じゃあ、この花瓶選んだのも宇都宮なんだ?」

意味ありげに流し目を送ると、冷や汗をかきながら逃げ出したい衝動を必死で抑えてそこに立っている高崎。

「あの…もしかして何か失礼を…?」
「…いや、高崎に免じて褒め言葉として受け取っておくよ。」

ぎゅうと握りしめられていた花を高崎の手からそっと奪うと、目をぱちくりとさせながらも高崎は微妙な顔のままだ。
僕はまたクスリと笑ってありがとうと伝える。宇都宮によろしく、とも言い残し、高崎をほおってさっさとその場を去ってしまった。

「…宇都宮も手の込んだことをするねえ。嫌なやつー。」

デンドロビウム・ファレノプシス。
略してデンファレ。

その花言葉は、「有能」「魅惑」「お似合い」そして、


『わがままな美人』




上越開業祝いおめでとう!ということで小話を思いついたので書かせていただきました。今までどおり絵だけのつもりだったのですが、ネタが降りてきたので勢いのままに。予定よりかなり長くなってしまった…あいたたた。
最初はなんとなく上越にはデンファレが似合うな!と何となく描いただけだったのですが、ふと思い立って花言葉を調べたら「わがままな美人」と。まさにぴったりじゃないか!!と偶然が呼んだ奇跡?にのっかって、小話が出来上がりました。
一応前半部は過去の話。たぶん東北上官は花言葉なんか気にしてないです。(笑)ちなみに幻の3人目は、お察しのとおり成田新幹線のつもりです。成田も同時開業の予定だったかどうかは知らないのですが、正式な工事締結になったのは東北・上越開業の翌年だったので、上越開業時にはほぼ中止が決定されていたのかなあと思いまして。着工はみんな一緒でしたからねえ…ちょっと出してみたくて。
後半は今の話。また捏造甚だしいですが、高崎にも上越を祝って欲しかったので。
男の人にお花ってどうなんだろう…と思ったりもしたのですが、上越上官って部屋に花飾っても似合いそうだなと思いそのまま決行。まあ観葉植物か、食虫植物くらいありそうですがね。(笑)宇都宮はもちろん確信犯です、ええ。でも彼なりの皮肉にしては綺麗すぎたかしら?もしかしたら東北上官に昔の話を聞いていたのかもね☆(←)

上官ズは秋田さんがくるまでは、あんまりそういうお祝いとかわざわざやらなそうですよねー。ちょっとしたおめでとうぐらいは言いそうですけど。きっと今はみんなで開業日のたびにわいわいパーティやってればいいと思います。

長々とここまでおつきあいくださりありがとうございましたー!

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