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おにの灯

東海道本線と東北本線。

というか会話してるだけ?苦笑

既にお盆はすぎてしまいましたが夏が終わる前に…なんとか間に合わせたかったのでした。まる。









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『おにの灯』


灯っている、生温い風にゆらりと揺れるそれ。

真夏の日差しが容赦なく照りつける屋根の下、降りていく客の手荷物の色にツイと視線を誘われた。
この季節はどいつもこいつも自己主張の激しい色を持って生命を誇示する中で、アレだけは、あの鮮やかな橙だけはなぜか一定の暗さを落とす。

自分も、北のあいつも身に纏う橙とは少しだけ違った色のほおづき。

人間の勝手な感傷で「そう」自分が感じるのはおかしなものだとも思ったが、その人間に必要とされて初めて存在し得るのだからしかたのないことだと息をつく。
真夏の真ん中、カレンダーを見ると数字と記憶が簡単に遡るから。

「そういう時期だったか。」

ぼそりと吐き出された言葉は俺の流した視線の先を追っていた宇都宮の耳にも届いていたらしかった。
とっくに見えなくなっていたほおづきの跡から振り返った奴の唇は上がっている、

笑っていた。



人が随分少なくなったねえ、と何げない様子で一歩近づくのをなんとなく迎えて、都会に来るほとんどは帰る場所が遠くにあるらしいからな、と返す。

ご先祖さまが帰ってくるって、あれ本当かな。別にどこでだっていいと思うんだけども、ねえ。
西と北って作法が違うんだっけ?

張り付いた嘘くさい笑みのまま紡がれる言葉は薄っぺらい。

「さあな、知識としては知ってる、でも俺は、迎え火も送り火も焚いたことが無い」

正直に自分の体験不足を語ると、そいつは一瞬きょとんとしてあははと笑い出した。

「そういえば僕も無い!」

互いに120年近く生きていたというのに俺たちを通り過ぎていくたくさんの人々がいたというのに、儀式めいた行為を受け継がれるそれを、しようとしたことは不思議と無かった。
かといって、俺たちみたいなのが迎えたところで果たしてやってくるのだろうか、誰が。

「井上さんとか会いたくないの、きみ」

あえてその名前を出すそいつの表情は平然と。お前にだって、言いかけて止める。
普通に考えれば、彼らは彼らの家族の元へ帰るべきで、その子孫の元へ帰る筈なのだから。

「なら、お前は、誰が帰ってくると…」


ふと、生温い風が止んだ。
平日の真っ昼間企業のお盆休み期間のかぶるこの時期、ただでさえ少ない人の気配が消える。
妙な違和感で宇都宮を見やれば向こうも笑みを引っ込めてこちらを見つめ返していた。

これはなんだ。


聞こえる筈の無い音がレールとホームを振動させる。
真っ黒で大きな姿が堂々と横切って動輪をきしませていた。
満員の客車はみなそれぞれに荷物を抱え沈黙しているようだった、表情までは伺えない。
どうみてもあの日のように白帯に見劣りする事実だけどころかぼろぼろの車体はそれでも役目を全うしようとこれも横切っていく、そんな馬鹿な。

まともな車両が用意できなくて悔しくてでも前を向けたようやく兵器でなくなった、そんな頃の。



一際大きな汽笛が鳴ったかとまたたいた瞬間消えた幻。
何度かまたたいてようよう周りを見回す。
ざわめきはいつのまにか戻っていた。

きょろきょろと確かめるように何もいないホームとレールの先を見つめる、掠めるように伺った宇都宮の表情は硬いまま。

ふと足下を見やると、さっきは気づかなかったほおずきがひとつ、ぽとり落ちていた。


これは。
祭壇の上で燃えるでもなく灯るあかりなのだときいたことがある。

光るでもなく橙を主張して枯れながら身の内に玉を残すのだ、真っ赤な玉を抱えたまま。
消えない鬼火だと、零した。



「君は何が見えたの、」

答えを期待しない問いかけ。

「多分お前と同じだろうな」

しかめっ面で返した筈が口先だけ笑っていた。



結局僕らは誰が会いにきてくれるのだろうねえ、とぼやく奴も俺もそれを試してみるつもりはさらさら無くて。


陽炎が、鬼灯を歪ませた。


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畳むほどの内容じゃないというか、ちょっと不思議な話でした。
プチホラー?
個人的にはほおずきって可愛くて好きです。
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